ツイドールのうちの子置き場です。
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怒涛のランチタイムを終えた夕方の《Neun:Fisch》店内。現在客数は0。玉藻はそれはそれは暇を持て余していた。客が来なければ仕事がない、話相手もいない。
「…こういうときの話相手確保のためにもアルバイトでも募集しようかしら。」
今は客数0だが、最近は自分一人では手が回らないこともある。一人で切り盛りするのも限界かしら…でもバイトねぇ…
雇うなら、しっかりした子がいいわ。でもって上手く手の抜ける子。あまり真面目でも息が詰まるもの。可愛い少年少女がいいわね…。
理想のバイトを想像していると不意にカランコロン、とドアに吊したベルが来店客を知らせた。
「…こんにちはー」
おそるおそる、という様子でボブに赤いカチューシャの可愛らしい少女が入ってきた。セーラー服にカーディガン、学校帰りの高校生だろうか。
「いらっしゃいませ、お嬢さんお一人様かしら?」
「おじょ…!?は、はい一人です!」
「ではお好きな席へどうぞ?私的にはカウンター席でお話相手になってもらえると嬉しいけれど」
「はい…!」
キョロキョロしながら、カウンター席に座る女子高生。目をきらきらさせて、どこか小動物のようで可愛らしい。と、玉藻がうっとりしながらメニューを手渡すと「あ、ありがとうございます!!」と興奮気味な様子に玉藻は口元が緩むのが押さえられない。
メニューを熱心に見つめる彼女を頬杖をついて見守る。時折声を上げながらメニューを眺めている様子を見ていると楽しくてやはりニヤニヤしてしまう。
「ご注文はお決まりかしら、お嬢さん?」
と声をかけると、彼女は一拍分きょとんとしてから、「わわわ…」と慌てはじめた。
「ふふふ、慌てなくてもいいわよ。急かしたみたいね、ごめんなさい」
「いえいえ!!じゃあ、あの…お姉さんのお薦めはなんですか?」
「お姉さん…?」
「はっ!お姉さん呼びはお嫌でしたでしょうか!!」
「いやじゃないわ。あまり呼ばれ慣れないから新鮮で。…私はここの店主の玉藻よ、お好きなように呼んで頂戴、お嬢さん」
「玉藻、さん…!!素敵なお名前ですね!!私は式部とこなつといいます!」
「可愛らしいお名前ね、式部さん。ご丁寧にありがとう。…嗚呼、お薦めだったわね。そうね…さっき出来たばっかりのフルーツタルトなんかどうかしら?あとはアラザン入りの紅茶なんか可愛らしくて貴女におすすめよ」
「タルト…!!ではそれをお願いします…!!」
かしこまりました、とにっこり笑うととこなつは「よ、よろしくお願いします!」と元気に返す。本当に賑やかで可愛らしい。頬をゆるませたまま、温くなっていたお湯を再び火にかける。冷蔵庫からタルトを出して、二人分切り分ける。片方はすこし大きめにカットして、皿に乗せる。フォークは華奢で愛らしい細工のシルバーを。茶葉をガラスの透明なポットにいれて、準備完了。
「お待たせしたわね。まずはフルーツタルト」
「わぁぁ…!!って、あれ?ふたつ?」
「私もちょうど小腹が空いていて。ご相伴してもいいかしら?」
「はい!よろこんで!!」
「ふふっ、本当に元気な子ね。あとは、紅茶」
茶葉の入ったポットをとこなつに見えるように置く。十分熱く沸いた湯を、そこに注ぐ。
「う、わぁ…!!」
湯が入った瞬間に浮き上がる茶葉にまじって、くるくると銀色の小さな玉が踊る。
その様子を食い入るように、楽しそうに見つめるとこなつ。彼女の反応に満足してから、棚から彼女に似合うカップとソーサーを選ぶ。そして自分愛用のカップと一緒にカウンターに並べ置いてから、カウンターの内側を出て、とこなつ隣の席に座った。
「どう?お気に召していただけたかしら?」
「はい…!キラキラして魔法みたいやった…!ほんま素敵!!!」
「うふふ、なら良かったわ」
頃合いを見て紅茶をカップに注ぐ。ちょうど二人分。
「それじゃあ、どうぞ召し上がれ?」
「いただきます!」
タルトと紅茶を味わいながら、うっとりした表情で足をバタバタ動かす姿を見ながら玉藻もタルトを口に運ぶ。
そしてふと、とこなつの通学鞄から顔を出している求人誌に気が付いた。
「…式部さん、アルバイト探し中?」
「?!な、なぜそれを…!!」
「ふふっ、何でかしらねぇ?」
私はアルバイトを募集中。彼女はアルバイト先を探し中。賑やかで、しかし礼儀ただしく可愛らしい女の子。これは運命的な巡り合わせではないか。
そう思うと《Neun:Fisch》のバイトはこの子しかいない、なんとしても口説き落とさなければ…と考えをまとめると玉藻は口を開いた。
「今、うちのお店アルバイト募集してるのよね。ちょうど貴女みたいな明るくて元気な子を探してたの。どう?興味あるかしら?」
少し困った顔を作ってとこなつに問い掛けると、彼女は勢い良く首を縦に振った。…いい反応だ。もう一押し。
「嬉しいわ。仕事は少しお手伝いくらいでいいの。もし興味があるならお茶いれたり、ケーキの作り方とかも教えるわ。おやつと賄い付き、来るのも来れるときだけでいいわ。お給料は…そうね、時給800円からお仕事次第で色をつけるわ。…あと、これはすごく勝手な言い分なのだけど。バイトを雇いたいと思った矢先に貴女がここにやってきて、すごく運命的なものを感じたわ」
「運命?」
「ええ。それに、こうして貴女とお話してみて、貴女となら楽しくやっていけそうって思ったの…だから是非貴女を雇いたい。どうかしら?」
「…やります!!」
落ちた。
玉藻はにっこり笑って、席を立ってカウンターの内側へ戻り、残ったタルトを持ち帰り用の箱に入るだけ入れた。
首を傾げているとこなつにそれを差し出す。
「ありがとう、とても嬉しいわ!これは感謝の気持ちよ。同じタルトで芸がないけれど、良かったらお家の人とたべてね」
そう言うとまたとこなつは目を輝かせて「あ、ありがとうございます!」本当に可愛らしい。
「これからよろしくね、しっきー」
「し、しっきー…?」
運命のバイトと出会う話。
―――
和丹さん宅の式部とこなつちゃんが《Neun:Fisch》で働いてくれることになりました。
「…こういうときの話相手確保のためにもアルバイトでも募集しようかしら。」
今は客数0だが、最近は自分一人では手が回らないこともある。一人で切り盛りするのも限界かしら…でもバイトねぇ…
雇うなら、しっかりした子がいいわ。でもって上手く手の抜ける子。あまり真面目でも息が詰まるもの。可愛い少年少女がいいわね…。
理想のバイトを想像していると不意にカランコロン、とドアに吊したベルが来店客を知らせた。
「…こんにちはー」
おそるおそる、という様子でボブに赤いカチューシャの可愛らしい少女が入ってきた。セーラー服にカーディガン、学校帰りの高校生だろうか。
「いらっしゃいませ、お嬢さんお一人様かしら?」
「おじょ…!?は、はい一人です!」
「ではお好きな席へどうぞ?私的にはカウンター席でお話相手になってもらえると嬉しいけれど」
「はい…!」
キョロキョロしながら、カウンター席に座る女子高生。目をきらきらさせて、どこか小動物のようで可愛らしい。と、玉藻がうっとりしながらメニューを手渡すと「あ、ありがとうございます!!」と興奮気味な様子に玉藻は口元が緩むのが押さえられない。
メニューを熱心に見つめる彼女を頬杖をついて見守る。時折声を上げながらメニューを眺めている様子を見ていると楽しくてやはりニヤニヤしてしまう。
「ご注文はお決まりかしら、お嬢さん?」
と声をかけると、彼女は一拍分きょとんとしてから、「わわわ…」と慌てはじめた。
「ふふふ、慌てなくてもいいわよ。急かしたみたいね、ごめんなさい」
「いえいえ!!じゃあ、あの…お姉さんのお薦めはなんですか?」
「お姉さん…?」
「はっ!お姉さん呼びはお嫌でしたでしょうか!!」
「いやじゃないわ。あまり呼ばれ慣れないから新鮮で。…私はここの店主の玉藻よ、お好きなように呼んで頂戴、お嬢さん」
「玉藻、さん…!!素敵なお名前ですね!!私は式部とこなつといいます!」
「可愛らしいお名前ね、式部さん。ご丁寧にありがとう。…嗚呼、お薦めだったわね。そうね…さっき出来たばっかりのフルーツタルトなんかどうかしら?あとはアラザン入りの紅茶なんか可愛らしくて貴女におすすめよ」
「タルト…!!ではそれをお願いします…!!」
かしこまりました、とにっこり笑うととこなつは「よ、よろしくお願いします!」と元気に返す。本当に賑やかで可愛らしい。頬をゆるませたまま、温くなっていたお湯を再び火にかける。冷蔵庫からタルトを出して、二人分切り分ける。片方はすこし大きめにカットして、皿に乗せる。フォークは華奢で愛らしい細工のシルバーを。茶葉をガラスの透明なポットにいれて、準備完了。
「お待たせしたわね。まずはフルーツタルト」
「わぁぁ…!!って、あれ?ふたつ?」
「私もちょうど小腹が空いていて。ご相伴してもいいかしら?」
「はい!よろこんで!!」
「ふふっ、本当に元気な子ね。あとは、紅茶」
茶葉の入ったポットをとこなつに見えるように置く。十分熱く沸いた湯を、そこに注ぐ。
「う、わぁ…!!」
湯が入った瞬間に浮き上がる茶葉にまじって、くるくると銀色の小さな玉が踊る。
その様子を食い入るように、楽しそうに見つめるとこなつ。彼女の反応に満足してから、棚から彼女に似合うカップとソーサーを選ぶ。そして自分愛用のカップと一緒にカウンターに並べ置いてから、カウンターの内側を出て、とこなつ隣の席に座った。
「どう?お気に召していただけたかしら?」
「はい…!キラキラして魔法みたいやった…!ほんま素敵!!!」
「うふふ、なら良かったわ」
頃合いを見て紅茶をカップに注ぐ。ちょうど二人分。
「それじゃあ、どうぞ召し上がれ?」
「いただきます!」
タルトと紅茶を味わいながら、うっとりした表情で足をバタバタ動かす姿を見ながら玉藻もタルトを口に運ぶ。
そしてふと、とこなつの通学鞄から顔を出している求人誌に気が付いた。
「…式部さん、アルバイト探し中?」
「?!な、なぜそれを…!!」
「ふふっ、何でかしらねぇ?」
私はアルバイトを募集中。彼女はアルバイト先を探し中。賑やかで、しかし礼儀ただしく可愛らしい女の子。これは運命的な巡り合わせではないか。
そう思うと《Neun:Fisch》のバイトはこの子しかいない、なんとしても口説き落とさなければ…と考えをまとめると玉藻は口を開いた。
「今、うちのお店アルバイト募集してるのよね。ちょうど貴女みたいな明るくて元気な子を探してたの。どう?興味あるかしら?」
少し困った顔を作ってとこなつに問い掛けると、彼女は勢い良く首を縦に振った。…いい反応だ。もう一押し。
「嬉しいわ。仕事は少しお手伝いくらいでいいの。もし興味があるならお茶いれたり、ケーキの作り方とかも教えるわ。おやつと賄い付き、来るのも来れるときだけでいいわ。お給料は…そうね、時給800円からお仕事次第で色をつけるわ。…あと、これはすごく勝手な言い分なのだけど。バイトを雇いたいと思った矢先に貴女がここにやってきて、すごく運命的なものを感じたわ」
「運命?」
「ええ。それに、こうして貴女とお話してみて、貴女となら楽しくやっていけそうって思ったの…だから是非貴女を雇いたい。どうかしら?」
「…やります!!」
落ちた。
玉藻はにっこり笑って、席を立ってカウンターの内側へ戻り、残ったタルトを持ち帰り用の箱に入るだけ入れた。
首を傾げているとこなつにそれを差し出す。
「ありがとう、とても嬉しいわ!これは感謝の気持ちよ。同じタルトで芸がないけれど、良かったらお家の人とたべてね」
そう言うとまたとこなつは目を輝かせて「あ、ありがとうございます!」本当に可愛らしい。
「これからよろしくね、しっきー」
「し、しっきー…?」
運命のバイトと出会う話。
―――
和丹さん宅の式部とこなつちゃんが《Neun:Fisch》で働いてくれることになりました。
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