ツイドールのうちの子置き場です。
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わたしは玉木しのぶ。わたしは自分の名前が嫌いだ。この名前はわたしの名前であって、私の名前じゃないから。「玉木忍」というのがわたしの母親。あったことはない。でも、家にある写真に写る母はとても静かそうな、きれいな女性だった。母は体の弱い人だったそうで、わたしを産んだときに亡くなった。母を深く愛していた父は、母の死をそれは嘆き悲しんだのだろう。生まれてきたわたしのことを忘れるくらいに。…そしてわたしに与えられた名前は「しのぶ」。まるで母の身代わりのように同じ名前で縛られている。
なんて忌々しい名前。名前すら自分のものでないなんて。
父にすら存在を認めてもらえていないような気がして、わたし自身を見てほしくて、一生懸命勉強もした、模範的な娘であろうとした。でも、認めてもらえなかった。いい成績をとればほめてくれるし、模範的ないい父親であろうとしているが、父は今まで一度だってわたしを「しのぶ」と呼んだことはない。
あなたがわたしを「しのぶ」にしたくせに。
わたしは自分の名前が嫌いだ。この名前は借り物だから。だけどこの名前だけが、わたしを父と母とむすびつけてくれているのだ。だから未練がましいわたしはこの名前を完全に捨てることができないでいる。
私は玉藻。祖父がよく話してくれた九尾の狐の名。今日からこれが私の名前。
「しのぶ」にも「忍」にもなりきれないなら、まったくの別人になりましょう。
もう「しのぶ」をつなぎとめる人は誰もいないのだから。
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